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相続・遺言コラム

遺言の解釈について

遺言書の記載内容で、書かれていることの意味がよくわからないことがあります。

そういう場合は、遺言者がどういう意思で遺言を書いたのか、正確な法的意味を確定させる作業が必要になります。

この遺言者の意思の正確な法的な意味を確定するのが、「遺言の解釈」です。

解釈にあたっては、二通りの考え方があります。

遺言書以外の資料(生前の日記。書簡、証言など)を広く考慮する立場です。
裁判所は基本的にこの立場をとっています。

これに対し、解釈の基準としては、民法の規定や遺言書自体の記述を重視し、それ以外のものは、あくまで参考にとどめようとする立場があります。
文面を重視する考え方です。

いずれの立場であっても、遺言書の中の法的に効力のない部分も、遺言の解釈にあたっては考慮されることになります。

そういう点からも、「遺言者の思い」を遺言の中に書き残しておくことは、二重の意味があるといえます。

ひとつは、遺言の中にメッセージを残すことにより、それが残された遺族に伝わり、結果として遺言者の意思が実現されることです。

もう一つは、裁判所による遺言書の解釈には、相当広い裁量があることを前提にして、遺言書の中に法的に意味のない「思い」を書いておくことが、裁判所自体の遺言の解釈を左右することも有りうるということです。

ただし、記載内容によっては、遺言そのものの意味が確定できなくなってしまうこともあるので、専門家に相談するなど特に注意が必要です。

遺言の解釈をめぐる裁判例で興味深いものもありますが、また次の機会に触れたいと思います。

超高齢化社会と遺言

日本は、超高齢化社会に突入しようとしています。
このことと「遺言」は、どういう関係にあるのでしょうか。

まず、「相続」が発生する場面が多くなっていくのは当然のことです。

その他に考えてみると、次の3つがあると思います。

①高齢者が再婚することがあるということ
②子どもが、親より早く亡くなることがあること
③晩婚化との関係です。

①について、再婚をした生存配偶者が財産の相続人になります。
生存配偶者と前婚の子どもたちとの間で、遺産分割協議を円満に行うことが難しいケースが多いでしょう。

②について、子どもが親より早く亡くなると、相続関係が複雑になります。
具体的には、関係する相続人の数が多くなります。(亡くなった子の配偶者や子どもも、親の相続人として登場するので)

③について、高齢者の介護などの負担と自分の子どもの教育費、住宅ローンの負担が重なってのしかかってくるケースが考えられます。
子にとっては、親の財産を現実に引き継ぐ必要が出てくるということです。

民法は、明治の時代に制定されたものであり、現在の状況を必ずしも想定してはいません。

①から③に共通していえるのは、このままだと相続関係が複雑になり、円滑な相続が期待できにくいということだと思います。

この間隙を埋めるのが、「遺言」であるのです。
あらかじめ「遺言」を準備しておけば、無用の争いを避けることができ、円滑な相続を実現することもできます。

こうした意味からも、超高齢化社会を迎え、「遺言」の果たす役割はますます大きくなっていくものと考えます。

自筆遺言証書の日付について

自筆遺言証書では、「遺言者は、その全文、日付及び氏名を自書に、これに印を押さなければならない。」とされています。(民法968条Ⅰ)

遺言者の遺言能力の有り無しの判定や内容が矛盾する複数の遺言があるときの先後を確定させるには、自書された「日付」は判定のよりどころになります。

その意味で、大変重要な遺言の要件であり、「日付」を書いていないと遺言自体が無効になってしまいます。 くれぐれも注意してください。(自筆証書遺言は、専門家がかかわることが少ないという意味でも)

さて、こういうケースは、どうでしょう。(あくまで教室事例的ではありますが)

夜の11時から遺言書を書き始めて、書くのが疲れてきて、日が変わって翌日の1時に完成したケースです。

この場合は、(込み入った議論もあるところではありますが)「日付を含めて遺言全部を完成した日」を表示することになります。

また、年月日が特定できればよいので、例えば「2020年体育の日」「60歳の誕生日」というものであっても有効と認められています。

これに対して、「令和2年6月」「令和2年5月吉日」という記載は、日付を特定できないことを理由に遺言自体が無効とされています。
あいまいな表現は避ける必要があります。

繰り返しになりますが、「日付」は、年月日を含めて正確に書かなければなりません。
最後まで気を緩めず、書くべきものといえます。

遺言できる年齢について

民法によれば、「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」と書かれています。(民法5条)

これに対し、遺言に関しては、「満十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」と規定されています。(民法961条)

一般に教科書などを読むと、「遺言」は遺言者の意思のあらわれであるから尊重すべき。 物の売り買いなどの法律行為よりも、高いレベルの判断能力がなくても行うことができるという趣旨のことが書かれていることがあります。

私も、初めに勉強したとき、「なるほど、あぁそうか。」と特に問題とも思いませんでした。 

でも、ここでよく考えてください。 
ほんとうに、そう言い切れるものなのでしょうか。

たしかに、「認知」など家族関係については、そう言える(本人自身の意思の尊重)と思います。
しかし、高額な財産処分を内容とする「遺言」のときにも同じように考えてよいものでしょうか。

遺言者の判断能力が低下した状態や判断能力が十分でない年齢で、高額な財産を処分することが、はたして公正な相続といえるでしょうか。


ここで、次のような考え方が出てきます。
「遺言する内容の複雑さ・難易度や財産の額に応じて、遺言能力を判定する『ものさし』も違ってくるはずだというものです。」
説得力があると思います。

裁判例をみても、遺言の内容(複雑さなど)を考慮して、判断能力の低下を理由に遺言が無効とされるケースがでています。

こうしたことになるのも、遺言能力に関して、通常の法律行為よりも低いレベルの判断能力で足りるという誤解が根底にあるようにも思います。

 

以上のことからも、「遺言」をするには、後から無効とならないよう、元気なとき、判断能力が低下しないうちに早めに行うことが何よりも大切であるといえます。

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